サイモントン療法というがんの心理療法について耳にしたことはあるでしょうか。がんと心との密接な関係は、時に薬物療法をも超えることがあるのです。今回は、サイモントン療法について、心と身体の仕組みに触れながら、詳しくご紹介していきます。

 

サイモントン療法とは

最新の研究では、がんの治癒が心の在り方と深く関わっていることが分かってきました。

サイモントン療法は心理療法1つで、病気を治すという信念を持って、身体からがん細胞を消失させるイメージを強く持つという「イメージ法」です。

つらい闘病生活の中でも、患者さん自身が生きる意味を見い出すようになると、それまで治療の足枷となっていた抑うつ状態や絶望感から脱却し、徐々に健康を取り戻していくようになるのです。

「想像するだけで病気が治る」こう聞くとなにやら怪しいものに聞こえるかもしれません。しかし、実はそういう決めつけ、あるいは思い込みを持っている人ほど、心理療法の効果は得られやすいのです。

 

病気を治しているのは自分自身

病気は医学的な治療を受けることでしか治らないものだと思われがちです。患者さんは「医師が病気を治してくれている」と思い込んでいます。しかし、実際に病気を治しているのは患者さん自身なのです。

風邪の原因菌を殺すような“風邪薬”というものは存在しないことをご存知ですか?風邪薬というのは、咳を止めたり、鼻水を止めたり、熱を下げたり、痛みを抑えたり、風邪によるつらい症状を抑えてくれます。言い換えれば、それだけなのです。

実際に病原菌と戦っているのは、生来自身の身体に備わっている免疫機能です。免疫機能は主に白血球やリンパ球によって維持されています。病原菌を見つけた免疫細胞は、病原菌に攻撃し、あるいは貪食し、病原菌を死滅させるのです。風邪薬は免疫力をサポートする薬に過ぎません。

熱や痛みのせいで十分な休養が取れずに、身体に疲労が溜まると、免疫力が低下してしまいます。これを防ぐために、薬は免疫力の低下につながるような症状を抑え、あとは自然治癒力に任せているのです。

がんは、風邪のように自然治癒力だけで治せるような病気ではありません。このため、専門的な医療機関で援助を受けることは必要不可欠です。しかし、病気の治療は薬に頼っているだけでは治らない場合もあります。

 

生きようとする強い意思

がん患者さんの中には、適切な治療を受ければ長期的な生存が期待できる患者さんであっても、現状に無関心になったり落ち込んだり、絶望感に苛まれる人がいます。

一方、末期がんの告知を受けても、病気に対して前向きで、日々の生活が希望であふれている人もいます。余命数ヶ月と告げられて、十分な治療もできずに退院した人が、半年ごとの定期検診にやってきては、毎日の充実した生活を楽しそうに報告する人もいます。

このように、医学的には説明できないような形で回復する患者さんは少なくありません。

そのような患者さんに「なぜ、余命を超えてこれほど健康的な生活を出来るのか」尋ねると、その答えには共通点がありました。

「子供が大きくなるまでは絶対に死ねません。」「私がやらなければいけない仕事がまだたくさんあります。私にしかできない仕事なんです。」と、生き続けようとする強い意思があったのです。

 

プラシーボ効果

本来は薬としての作用のないものを、薬のような形状に整え、患者さんにはその事実は伏せた上で使用させると、症状が軽快することがあります。これをプラシーボ効果と呼びます。患者さんの思い込みと、その物体に対する肯定的なイメージによって、治療効果が得られるというものです。

ある研究では、関節炎に対して一方のグループには鎮痛剤を、もう一方のグループには砂糖の錠剤を渡しました。すると、両者の有効率はほぼ同じという結果になりました。さらに、プラシーボを投与したグループで治療効果が出なかった患者さんに、単なる水の注射を行ったところ、64%の患者さんに改善がみられました。これは思い込みによって、言い換えれば。強い信念をもつことによって病気を治すことができるという画期的な発見となりました。

 

右脳と自律神経

私たちは普段、目覚めている間は主に左脳を使っていることが分かっています。一方、深いリラックス状態や瞑想状態では右脳を使うようになります。右脳は感情や空間、想像などの際に働く領域であり、自律神経系をコントロールするといわれていますし。

たとえば、不整脈で頻脈になっている患者さんに、小さな子供がゆっくりとブランコをこいでいる状況をイメージしてもらいます。すると、右脳を通して自律神経が影響を受け、ゆっくりと正しく脈を打つよう変化した例が報告されています。

この事実を元に、カール・サイモントン医師は、心の持つ可能性に強く関心を持っており、イメージの力で免疫力を高める方法があるのではないかと考えました。患者さんに生きようとする強い意思を持ってもらい、その上で、活性化した免疫細胞ががんを死滅させるというイメージを描く方法を治療法として成立させました。これがサイモントン療法です。

 

サイモントン療法の1例

サイモントン医師が初めてイメージ療法を行ったのは、ジムという63歳の男性で、頚部の進行がんを患っていました。ジムは頸部のがんのために息苦しさが続き、食事もままならないような状態でした。しかし、ジムには強い意思があり、どうにかして自身の身体をコントロールできないかと模索していました。

ジムの頚部がんは、治療はすでに難しい状態であり、有効な治療法はありませんでしたが、放射線療法によってがんを小さくして、一時的に症状を和らげることだけを目的に治療が行われることになりました。そして、サイモントン療法を試行することになりました。

サイモントン医師は「全身を巡っている血液の中にはがん細胞と戦う白血球が存在している。その多数の白血球が、首にあるがん細胞に一斉に集まり、攻撃して消滅させる」というイメージを毎日3回行うようジムに指示しました。

ジムは強い意思を持って、毎日イメージを続けました。6週間後、ジムは「だんだんイメージをコントロールできるようになったと感じています。」と話しました。がんは放射線療法で小さくなり、予想されていた副作用もほとんどありませんでした。その上、この6週間で体重も増え、釣りにいけるほど元気になりました。

その後ジムは「最近関節炎が痛くて。白血球に治させようと思っています。」と言いました。サイモントン医師は、関節炎に対してイメージ療法を行って効果が現れなかった場合、がんに対するイメージ療法への不信感につながり、病状が悪化するのではないかと心配して「関節炎をよくするのは難しいと思います」と説明しました。しかし、ジムは関節炎をも治してしまったのです。

さらにジムは「今度は20年前から悩んでいたインポテンツを治してみます。」と言いました。しかし、ジムのインポテンツは心因性のもので、身体的に悪いところがあるわけではなく、白血球が関与できる対象がありません。そう説明しても、「私は医学的なことは分かりません。でも、その必要もないのです。イメージが効くことさえ信じれば効果は現れるのです。」と話し、その後1週間もしないうちにインポテンツは治ってしまいました。

こうして、ジムはもう長くないと告知されてから9年も長く生きました。

 

サイモントン療法の有効性

その後、サイモントン医師はイメージ療法の有効性を示すため、159名のがん患者さんを対象とした研究を行いました。対象となった患者さんは3年に渡って観察されましたが、余命は平均12ヶ月と告げられていました。患者さんは2つの群に分かれ、一方には従来のような身体症状に対する治療法(対照群)を、もう一方には心理面にも関与した治療法(サイモントン療法)を行いました。

サイモントン療法を受けたグループでは、平均寿命は20.3ヶ月となり、対照群と比べて2倍近い生存期間となりました。

サイモントン療法を受けたグループのうち、3年経った時点で生存していた患者さんは、以下のような結果になりました。

  • がんが消失:14名(22%)
  • がんが縮小:12名(19%)
  • 変化なし:17名(27%)
  • 新たながんが発生:20名(32%)

さらに、この63名の患者さんのうち、51%の人はがんの診断を受ける前と変わらない生活を維持していることが分かりました。

 

従来の医療では身体と心は切り離して考えることが基本となっていました。しかし、サイモントン医師の活動をきっかけに、心と免疫機能とが直接関連していることを証明する研究が次々に報告されています。くれぐれも「今にも悪化するのではないか」「もうだめだ」と逆のイメージ療法を実行してしまわないよう、心に留めておいてください。

補完代替医療という選択肢を

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