あなたの身近な人が、がんを発症したとします。医師が「早期に発見できたので手術をすれば、ほぼすべてのがん細胞を取り切れます」と言っているのに、その人は「手術も抗がん剤も嫌だ。代替医療しか受けない」と言い張ったとします。
そのときあなたは「三大療法を受けるべきだ。代替医療なんていかがわしい」と言うのではないでしょうか。

なぜ多くの人は「三大療法は正しい」と思い、「代替医療はいかがわしい」と思うのでしょうか。
そして、なぜ「それでも代替医療を選ぶ人がいる」のでしょうか。

なぜ人は三大療法は正しいと思うのか

がん三大療法が正しいと思われる理由は、科学的に効果と安全性が証明され、学会と厚生労働省がその証明にお墨付きを与えているからです。
すなわち「効果と安全の証明」「学会」「厚生労働省」がないものは三大療法とは呼ばれません。

では「効果と安全の証明」「学会」「厚生労働省」がそろうと、なぜ「正しい」といえるのでしょうか。

厳しい検査に耐えた治療法だから

がんの三大療法とは、手術、抗がん剤、放射線の各療法のことです。この3つの療法にはそれぞれ様々な種類があります。

例えば現代のがん手術は、外科医がメスで切る手術だけではなく、手術ロボットを使う手術や、内視鏡手術、腹腔鏡手術などがあります。

抗がん剤に至っては、数えきれないほどの薬が発売されていますし、放射線療法にも、電子線、X線、ガンマ線、陽子線などたくさんあります。

三大療法に属する、これらすべての治療法は、基礎研究と臨床研究が行われています

基礎研究は細胞や分子レベルの研究から、動物実験までを含みます。この段階で多くの治療法が「効果なし」とされ、基礎研究で「安全そうだ」「効果がありそうだ」と認められたものだけが次の臨床研究に進めます。

臨床研究では、新しい治療法や薬を人に使います。ただこの段階になると「研究」とは呼ばれていますが、ほぼ実際の治療と同じ状況で行われます。つまり臨床研究は、人を使って実験するものではありません。

臨床とは「実際の医療現場」という意味で、「病院」と理解すると分かりやすいでしょう。臨床研究とは、病院の入院患者に協力してもらう研究なのです。

臨床研究まで進んでも、安全性や効果が十分でないと、その治療法は三大療法になれません。

さらに厚生労働省が診査する

臨床研究をパスすると、新しい治療法や新しい薬を開発した研究者や医師は、論文を書きます。論文は学会が出している雑誌や、学会の集まりで発表されます。こうすることで、その分野の研究者や医師たちの目に触れ、さらなる検証が行われるわけです。

学会が、新しい治療法と新しい薬を「問題ない」「良さそうだ」と判断すると、研究者や医師たちは、厚生労働省に「健康保険などの公的医療保険が使える治療法として認定してほしい」と申請します。

厚生労働省は学会が認めたからといってそのまま認定することはしません。ここでも厳しい審査を行います。

厚生労働省が認定して初めて、新しい治療法や新しい薬は、がん三大療法と呼ばれるようになります。

しかし、ここまでやっていれば三大療法は正しいと言える、となるでしょうか。そう感じた人は、「正しい医療」について少し誤解しているかもしれません

副作用、臓器除去、被曝という「被害」

例えばあなたは、「この薬を飲めば必ず嘔吐する」という薬を飲みたいでしょうか。もちろん飲みたくありません。

では「この薬を飲めば必ず嘔吐するけど、がんは小さくなる」という薬はどうでしょうか。多くの人は渋々飲むはずです。

これが抗がん剤療法の実態です。抗がん剤は、がんを発症していない人には絶対に投与してはならない薬なのです。

抗がん剤療法には、必ず副作用という痛みが伴うのです。最近は副作用が小さい薬も出ていますが、それでも副作用はゼロではありません。

最も大きながんの手術では臓器をそのまま取り除いてしまいます。

進行した胃がんなら胃を全部取り除き、肺がんなら片方の肺を取り除きます。大腸を取り除くと、へそのあたりに人工肛門をつくらなければなりません。
これが、がん手術の仕組みです。臓器の摘出は、がんを発症していない人には絶対にしてはならない行為です。

放射線療法にいたっては、被曝をともないます。被曝は本来、すべての人が避けなければなりません。
がん患者はがんを治療するために、止むを得ず被曝しなければならないのです。

三大療法を受けた患者がこれほどの「被害」を受けても、がん死が避けられないケースがたくさんあります

三大療法はがん患者が受けなければならない医療ではあります。

しかし「正しい医療」が、病気がすっきり治って完全に元の健康を取り戻す医療のことだとすると、三大療法が正しい医療と言い切れるかどうか疑問が残ります。

なぜ人は代替医療をいかがわしいと思うのか

アメリカのエール大学という有名大学が、代替医療を受けた人の死亡リスクは、三大療法を受けた患者より2.5倍高まるという研究結果を発表しました。

このニュースは日本でも、毎日新聞などのいわゆる信頼できるマスコミが報道しました。
アメリカのがん研究の権威が調査して、日本の有力マスコミが報じているのですから、「やはり代替医療はいかがわしいものだったのか」と感じた人も多いでしょう。

しかしこのことをもって、代替医療を全否定できるのでしょうか

代替医療だけを受けた患者との比較はフェアではない

それでは2017年9月19日に毎日新聞が報じた記事「代替医療のリスク2.5倍、標準治療と比較、米大学」を詳しく見てみましょう。

ちなみにこの記事でいっている「標準治療」とは、「三大療法」のことです。

まず、何と何を比較して代替医療のリスクが三大療法より2.5倍高いと判断したのか、に注目してみます。
比較したのは、三大療法を選んだ560人と、代替医療「だけ」を選んだ281人の5年後の生存率でした。

病名は両グループとも、転移のない乳がん、肺がん、前立腺がん、大腸がんです。

国内で代替医療を行っている医師の中で、三大療法を完全否定して、代替医療だけを進める人はほとんどいません。
代替医療を手掛ける多くの医師は、三大療法と代替医療を併用するか、三大療法を行った医師から「もう手立てはない」と言われた患者に代替医療を提供しています。

代替医療「だけ」を受けた患者と、三大療法を受けた患者の比較は、適正ではないと考える医師もいるでしょう。

「代替医療だけを受けたがん患者」の生存率が低かったことが、「通常の方法で行われている代替医療」の効果を否定することはできないでしょう。

砂糖玉が代替医療と呼ばれている

またリスクが高かったのは「なんの代替医療だったのか」という疑問もあります。代替医療も、三大療法と同様に、さまざまな種類があります。
毎日新聞によると、この調査の対象となった患者が受けた代替医療の種類は「不明」とあります。比較している三大療法は、手術、抗がん剤、放射線と明確なのに、「なんの代替療法だったのか」は不明だというのです。

ただ同じ毎日新聞の記事では、「調査対象となった代替医療はこれかもしれない」というものを紹介していて、それはハーブ、ビタミン、ミネラル、そして「植物や動物、鉱物などを希釈した水を染み込ませた砂糖玉を飲む療法」というものでした。
そこには「コロイドヨード」などは入っていません。


代替医療のヨウ素療法詳細を見る

ほとんど風評被害のようなもの

つまり、エール大学が調査対象とした代替医療は、日本の医師免許を持つ医師が扱っているコロイドヨードなどの代替医療とは、まったく異なるものなのです。
エール大学の研究結果をもって、「代替医療はいかがわしい」と思われることは、風評被害のようなものでしょう。

それでも代替医療を選択する人がいるのはなぜか

国内で代替医療を行っている医師のほとんどは、三大療法を否定しません。中には、患者に対して「まずは三大療法を受けてみて、それでだめだったら代替療法を試しませんか」と提案する医師もいます。

代替医療には、医師がしっかり管理しながら提供する代替医療と、民間療法と同程度のいかがわしい代替療法が存在するのです。

がんは人類の大きな敵です。すでに見たように、世界中の医学の権威たちが開発した三大療法でも、完全に勝利することができない強敵です。

がん患者やその家族がその強敵と闘うときに、医師が適正に管理している代替療法を受けることは理解できます。

まとめ~だまされないように

とても残念なことですが、がん治療は一大ビジネスになっています。お金の集まるところには、必ずいかがわしい話がわいてきます。

しかも、がん患者とその家族は、心理的にも弱っています。そこに「うまい話」が現れたら、のってしまうでしょう。

そうならないようにするためには、がん治療の知識を身につける必要があります。いかがわしい代替医療にだまされないようにしてください。