抗がん剤の副作用については「抗がん剤の副作用が出る時期と症状について」の章でご紹介しました。

副作用による生じうる症状は非常に幅広く、多岐にわたる症状に驚いた方もいるのではないでしょうか。今回は、抗がん剤でみられる一般的な副作用について、患者さん自身、あるいは周囲の方が協力できるような対応方法をご紹介していきます。

吐き気・嘔吐

抗がん剤による治療を行う場合、通常は吐き気を抑える制吐薬を併用します。

制吐薬も日々開発が進められており、以前と比べると吐き気・嘔吐に対してはかなりの効果が認められるようになりました。

しかし、それでも多少の吐き気・嘔吐は生じる可能性があります

吐き気があるときは、冷たい水でうがいをしたり、氷をなめるとよいといわれています。また、強いにおいから吐き気を誘発されることもあるたり、その場合は花などは飾らずに、部屋の換気を心がけるようにしましょう。

吐き気・嘔吐を予防するためには、抗がん剤の投与前は食事を軽くし、きつい服装は避けることをおすすめします。糖分やタンパク質に比べて、脂肪分は消化に時間がかかるため、油っこいものや乳製品は控えるとよいでしょう。

症状が強い場合は、食べられるものを少しずつ食べられれば十分です。

この時も、においの強いものや油っこいものは控えましょう。一般的に、吐き気・嘔吐の症状が強い場合には冷奴や果物、シャーベット、冷たいそうめんやうどんなど、水分量が多く冷たいものが好まれます

食事や水分の摂取が進まないと、脱水に陥ることもありますが、その際は点滴から水分や栄養を補給することも可能です。

アレルギー

アレルギーの症状を認めた場合は、ただちに原因と疑われる薬剤を中止する必要があります。アレルギーの初期症状は他覚的なものが少なく、ご自身で自分の身体の違和感に気付けることが求められます。

細胞毒性抗がん剤の場合、代わりとなる薬剤が複数あるため、原因薬物と同系統の薬剤は今後使用しないようにします。一方、分子標的薬によるインフュージョンリアクション(過敏反応)の場合は、治療を繰り返す毎に過敏性が軽くなるという特徴があります。

また、分子標的薬の場合は代わりとなる薬剤が限られているため、デメリット(副作用)がメリット(治療効果)を超えない場合には、症状があっても継続することがあります。主治医と相談のもと、メリットとデメリットを十分考慮した上で、納得のいく治療方法を選択しましょう。

ただし、アナフィラキシーが生じるほど重症化したものは、再投与は禁止されています。

全身倦怠感

無理のない範囲であれば仕事や家事を行うことは可能ですが、身体が疲れやすくなっているのは抗がん剤による副作用であることを理解しておきましょう。

治療中は療養に専念する時期であることを自分自身でもけじめをつけ、家族や周囲の人々の協力を得ることが大切です。

無理のない範囲で動き、疲れを感じたら十分な休養を取ってください。ただし、一日中横になっているような状態では、中途半端な睡眠が続くことで悪化を招く恐れがあります。

散歩やストレッチなど簡単な運動をすると、気分転換に加えて身体が適度に疲労を覚え、良質な睡眠へとつながります。

また、倦怠感が貧血やホルモンバランスの乱れ、抑うつ状態などに引き続いて生じている場合は、輸血やステロイド補充、抗うつ薬の投与などによって、根本的な治療をすることも可能です。

便秘

便秘の原因は抗がん薬の副作用だけでなく、食事や水分の摂取量の低下、運動不足なども関わっています。

消化管では食物を分解し、必要な栄養素や水分を吸収しながら、消化管自体が伸び縮みすることで下方へと送っていき(蠕動運動)、便を形成します。ここで、便に含まれる水分量が不足すると、硬くなって動きが悪くなり、消化管内に留まってしまいます。

便秘の際は、食事量もそうですが、多めの水分を摂ることが大切です。また、蠕動運動は身体を動かすことで促進されるため、お腹や腰、股関節などを動かすようなストレッチが効果的です。便意を感じた際に我慢してしまうと、便秘に拍車がかかるため、我慢せずに出そうなときに出すことを心がけましょう

口内炎

抗がん剤の副作用によって口腔粘膜が弱っているため、熱いものや硬いもの、辛い物、酸っぱいものなど粘膜の刺激になるような食品は避けましょう。

また、口内炎を引き起こす原因の1つに、副作用として免疫力が低下し、感染が起こりやすくなっていることが挙げられます。食後は歯みがきを心がけ、こまめにうがいする習慣をつけてください。口腔内の乾燥は唇の乾燥としても現れるため、唇が乾燥していると感じたときにはリップと一緒にうがいをする習慣をつけるとよいでしょう。

歯みがきの基本は、スクラビング法(歯と歯ぐきの間に軽く歯ブラシを当てて小刻みに動かす)です。硬い歯ブラシを使うと歯ぐきに傷ができ、そこを入り口として細菌が血管を通って体内へと侵入してしまうこともあるため、歯ブラシは柔らかく小さいものを使用してください。

また、虫歯や抜けそうな歯がある場合は、抗がん剤の治療を始める前に歯科で治療しておきましょう

口腔粘膜のターンオーバー(粘膜の再生)は2週間といわれています。

1度口内炎ができると治るまでに1週間以上かかりますが、逆に考えれば最短で約2週間で治すことができます。1日でも早く苦痛から解放されるためには、痛みにまけずにケアを続けることが大切です。

下痢

油っこい食事や乳製品、香辛料、アルコール、カフェインを含む飲料、果汁飲料などは腸の負担となります。下痢を悪化させないためにも、予防のためにも、これらの食品は控えた方がよいでしょう。食事はおかゆやうどんなど、温かく、栄養価が高い、かつ食物繊維が少ないような消化に良いものを選び、数回に分けて少量ずつ食べるようにしてください。症状の程度によっては、下痢止めを使うことも可能です。

また、下痢では大量の水分が失われるため、脱水には特に注意が必要です。水分補給は単純な水ではなく、ミネラルを豊富に含んだスポーツドリンクを選びましょう。

下痢は精神的なストレスによっても生じるため、不安やストレスが強い場合には精神的なケアも必要になります。

骨髄抑制:易感染性

免疫機能を担っている白血球が減少すると、細菌やウイルスなどさまざまな感染症にかかりやすくなります。

外界に存在する無数の病原菌から身を守るためには、手洗いやうがいを心がけ、清潔な身体と部屋を維持し、不必要な外出は避ける、外出時はマスクを着ける、など徹底した生活習慣が求められます。

私たちの身体は強力なバリア機能をもつ皮膚によって外界と境界をなしていますが、口とそこから続く消化管から肛門までは身体の外側とつながっています。

つまり、消化管の中には細菌がたくさん潜んでいるのです。これを常在菌と呼びます。

健康な人であれば、これらの常在菌は免疫機能によって制御されていますが、免疫機能が低下している状態では、常在菌が異常に増殖し、悪さをするようになることもあります。身体の中には病原菌が多数存在することを意識し、排尿・排便後にはしっかりと洗浄する習慣をつけましょう。

また、皮膚に傷口があると、そこから容易に感染が起こってしまうため、爪を切る、長袖を着て皮膚を守るなど、小さな怪我でもしないように注意が必要です。

骨髄抑制:出血傾向

普段の生活であれば全く痛みを感じないようなもの、たとえば歯みがきや鼻かみ、ひげ剃りなどであっても出血し、そしてなかなか止まらなくなります。出血のおそれがある動作に関しては、優しく、傷つけないよう注意が必要です。

また、身体の内側でも出血が起こりやすくなっており、特にぶつけた記憶もないのに点状の出血斑が生じたり、しめつけの強い衣服によって圧迫された部位に内出血が起こることもあります。

鼻血や切り傷など出血したときは5分以上は圧迫を続け、それでも止まらない場合は速やかに医療機関に受診してください。止血のためには出血部位を冷やすのも効果的です。大きな出血を予防するためには、激しい運動は控え、日常生活の中でも転んだりぶつけたりしないよう注意しましょう。

また、血小板が減少している状態では、脳出血や消化管出血などの致死的な出血をきたすこともあります。消化管出血がある場合、吐瀉物に血液が混ざったり、便が黒く変色していることがあります。脳出血では、激しい頭痛、片側の麻痺(身体が思うように動かない)、構音障害(ろれつが回らない)などの症状が現れます。

これらの症状を認める場合は、速やかに主治医に相談してください。

骨髄抑制:貧血

貧血は全身の臓器が酸欠に陥り、身体が思うように動けない状態です。めまいやふらつきがある場合は転倒の危険性が高いため、十分注意してください。

身体を動かすときは、ゆっくりと深呼吸しながら動く習慣をつけ、動悸や息切れが生じたときは身体が悲鳴をあげていることを認識して、無理せずに十分な休息を取るようにしてください。

食事に関して余裕があれば、鉄分やタンパク質を豊富に含んだ食事を摂れるとよいでしょう。

また、貧血では全身の代謝が落ち、身体が冷えやすくなっています。症状の程度に合わせて衣類や寝具を選び、身体に病状以上の負担がかからないよう意識を向けましょう。

脱毛

脱毛は抗がん剤投与から10日頃に始まり、20日頃には目立つようになります。さらに30日~60日の間にほとんどの毛髪が抜けてしまいます。抗がん剤には付き物の副作用ですが、覚悟したつもりでも実際に脱毛が生じるとそのショックは大きいものになるでしょう。

ただし、ほとんどの症例で早くて治療終了後3ヶ月、遅くとも10ヶ月までには毛髪の再生が始まるため、脱毛は一時的なものであることをしっかり心に留めておきましょう

脱毛による精神的な苦痛を軽減するための方法をいくつかご紹介します。

髪は短く切っておく

あらかじめ短く切っておくことで抜ける量が減り、長い場合と比べて脱毛が目立ちにくくなります。

抗がん剤の治療では、易感染性により行動に制限がかかることもあるため、治療開始前の体調の優れているうちに切っておくとよいでしょう。

医療用ウィッグやナイトキャップを用意する

ウィッグや帽子を使用することで、毎日の生活が少しずつ前向きになる助けになることがあります。

また、日中の生活に比べて、特に就寝中は抜け落ちた髪が枕元に溜まるため、視覚的にダメージを受けることも珍しくありません。夜間の脱毛を帽子の中に留めることで、精神的な負担を軽減させる効果が期待できます。

濃い色の服を着る

脱毛が強い時期では、ふと鏡を見た時に衣服に抜け落ちた髪が付着し、精神的な苦痛を受けることもあります。衣服への付着が気になる時は、色の濃い服を着ることである程度目立たなくさせることが可能になります。

神経障害

神経障害は一度認めると長期化し、生涯に渡って治らないこともあります。しびれや感覚障害などの症状は医療者には見ることができないため、症状を自覚した際は悪化する前に相談することが大切です。神経障害の症状を緩和させる方法には、末梢の血液循環をよくするとよいとされています。

しびれのある部分を温めたり、マッサージをしたり、指を動かして血流を促すなどの方法があります。血液の循環を阻害しないためには、障害部位周辺を圧迫しないよう意識しましょう。

症状がなかなか治らない場合は、神経障害による身体の動かしづらさのために二次的な怪我を引き起こさないよう注意してください。

たとえば、足の感覚が鈍い場合にはつまづいて転ばないよう身の回りの整理整頓を行ったり、手の感覚が鈍い場合には刃物の使用には細心の注意を払いましょう。

温度に対する感覚が鈍くなることもあるため、カイロやストーブを長時間使用しない、シャワーや食器洗いなどお湯を使う際は温度を確認するなどを心がけることも大切です。

抗がん剤の治療には数多くの副作用が付き物です。

最善の治療を受け続けるためには、副作用を十分理解して、それぞれに適した対処をとることが求められます。副作用の中には、自覚症状が強いものの他覚症状に乏しいものも少なくありません。がんと闘い続けるためには、自分が何に苦しんでいるのか、しっかりと見つめることが大切です。

補完代替医療という選択肢を

がん治療における身体症状・精神症状の負担を減らしたり、再発防止やがん予防に。
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