がんに対する治療として薬物療法が適応になるのは、手術ができないような進行がんに対する化学療法、あるいは術後の再発や転移を予防するための術後化学療法などが主な理由となります。

薬物療法の費用は、がんの種類や病状、治療内容によって変わるため、明確な金額を提示するのは難しいものです。今回は、その目安として少しでも具体的な費用が提示できるよう、いくつかのがんとその薬物療法にかかる費用について、詳しくご紹介していきます。

 

はじめに

今回、費用の例として、がんを理由に亡くなる方が多い「五大がん」に含まれる胃がん、大腸がん、肺がん、肝がん、乳がんに対する化学療法を取り上げていきます。

化学療法で用いる抗がん剤の量は、身長と体重から求める体表面積に応じて決定されます。

このため、同じ薬剤を用いた治療であっても、身体の大きさによってその費用は上下します。ここでは、155cm/50kg~170cm/60kgを基準の体型として、費用を計算しました(乳がんのみは160cm/55kgを基準としています)。

また、費用は10割負担(自費)の場合を仮定しており、実際には年齢や経済状況に合わせて、提示している金額の3割負担、1割負担となります。

 

胃がん

胃がんは日本人の罹患数(新たにかかる患者数)が最も多いがんです。

標準治療は手術による切除ですが、手術できないような進行がんに対しての薬物療法、あるいは術後に再発を防ぐための補助化学療法として、抗がん剤を用いています。

補助化学療法

補助化学療法では、TS-1(テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム剤)、CapeOX(カペシタビン、オキサリプラチン)が標準治療となっています。

TS-1

TS-1の内服を4週間継続し、その後2週間休薬するという6週間の周期を1サイクルとして、これを術後1年間繰り返します。費用は1サイクル(6週間)76,000~95,000円です。

CapeOX

CapeOXはカペシタビンの内服(3週間継続)とオキサリプラチンの注射(1日目のみ)の3週間の周期を1サイクルとして、これを術後8サイクル繰り返します。費用は1サイクル(3週間)967,000~1,190,000円です。

化学療法

手術ができない進行がんに対しては、TS-1+CDDP(シスプラチン)療法が標準治療となっています。

TS-1+CDDP療法

TS-1の内服(3週間継続)とシスプラチンの注射(8日目のみ)、その後2週間の休薬期間を設けた5週間の周期を1サイクルとし、治療効果を見ながら患者さんの全身状態に合わせてサイクル数が決定されます。費用は1サイクル(5週間)66,000~81,000円です。

 

大腸がん

発生部位別死亡数で見ると、男性では肺がん、胃がんに次ぐ3位、女性では1位であり、罹患率・死亡率ともに高いがんです。

大腸がんは、がんをすべて取り除くことが出来れば根治が見込める可能性高くが、早期がんではもちろん、転移巣まで切除できるものであれば、進行がんであっても積極的に手術が行われます。

抗がん剤は、手術が行えない場合や多発転移のためにすべてのがんが取り除けなかった場合、あるいは術後の補助化学療法として用いられます。

補助化学療法

補助化学療法では、FOLFOX療法(レボホリナート、フルオロウラシル、オキサリプラチン)、FOLFIRI療法(フォリン酸、フルオロウラシル・イリノテカン)などが行われます。

FOLFOX療法

FOLFOX療法、3剤の点滴を初め3日間継続し、その後11日間休薬するという2週間の周期を1サイクルとして、これを術後約6ヶ月間継続します。費用は1サイクル(2週間)47,000~49,000円です。

FOLFIRI療法

FOLFIRI療法も同様に、3剤の点滴を初め3日間継続し、その後11日間休薬するという2週間の周期を1サイクルとして、これを術後約6ヶ月間継続します。費用は1サイクル(2週間)30,000~31,000円です。

化学療法

手術で切除しきれなかった場合や、再手術が難しい場合には、化学療法が行われます。標準治療はFOLFOX療法やFOLFIRI療法に分子標的薬(ベバシズマブ、セツキシマブ)を組み合わせた治療法です。サイクル数は患者さんの全身状態に合わせて決定されます。

FOLFOX療法+分子標的薬

費用は、FOLFOX+ベバシズマブ療法は1サイクル(2週間)173,000~175,000円、FOLFOX+セツキシマブ療法は1サイクル(2週間)416,000~490,000円です。

 

肺がん

部位別死亡率は、男性で1位、女性で2位。リスクは喫煙であり、男性では喫煙率の著しい減少に伴って罹患率も低下した一方、女性では受動喫煙の影響を受けやすいために罹患率が増加しています。

肺がんは大きく小細胞がんと非小細胞がんの2つの組織型に分かれます。

小細胞がんは肺がんの1割程度が含まれ、悪性度が高いため、手術ではなく化学療法や放射線療法が中心となります。非小細胞がんは腺がんや扁平上皮がん、大細胞がんを総称したもので、肺がんの9割程度を占めます。

早期がんであれば手術単独の治療が可能ですが、それ以降では術後補助化学療法、進行の程度が強いものでは化学療法が中心となります。

非小細胞がんの補助化学療法

非小細胞がんの補助化学療法では、UFT(テガフール、ウラシル配合剤)、CDDP+VNR(ビノレルビン)療法などが行われます。

UFT

UFTは1日3回の内服を1年間継続します。費用は1年間で355,000円です。

CDDP+VNR療法

CDDP+VNR療法は、3週間を1サイクルとして、1日目にシスプラチンとビノレルビンの注射、8日目にビノレルビンの注射を行い、これを6サイクル繰り返します。費用は1サイクル(3週間)30,000~38,000円です。

小細胞がんの化学療法

小細胞がんの化学療法では、限局型ではCDDP+VP-16(エトポシド)療法、進行型ではCDDP+CPT-11(イリノテカン)療法が行われます。

CDDP+VP-16療法

CDDP+VP-16療法では、2剤の点滴を初め3日間継続し、その後25日間休薬するという4週間の周期を1サイクルとして、これを4ヶ月間継続します。

費用は1サイクル(2週間)30,000~32,000円です。

CDDP+CPT-11療法

CDDP+CPT-11療法では、4週間を1サイクルとして、1日目にシスプラチンとイリノテカンの注射、8日目と15日目にイリノテカンの注射を行い、これを4サイクル繰り返します。費用は1サイクル(4週間)66,000~79,000円です。

非小細胞がんの化学療法

非小細胞がんの化学療法では、CDDP+GEM(ゲムシタビン)療法など、プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチンなど)と他の抗がん薬を加えたプラチナ併用療法が行われます。

CDDP+GEM(ゲムシタビン)療法

CDDP+GEM(ゲムシタビン)療法では、3週間を1サイクルとして1日目にシスプラチンとゲムシタビンの注射、8日目にゲムシタビンの注射を行い、サイクル数は患者さんの状態に合わせて決定します。費用は1サイクル(3週間)91,000~103,000円です。

肝がん

肝がんは肝炎ウイルスの持続感染が主な原因となっています。肝がんは男性の部位別死亡数第4位ですが、近年インターフェロンや抗ウイルス治療などの治療が格段に進歩したことで今後はさらに順位が下がると考えられています。

肝臓は肝動脈と門脈の2本の大きな血管から栄養を受けているという特徴があります。さらに、正常な肝細胞は肝動脈と門脈から25%:75%の割合で血流を受けているのに対し、肝がん細胞はほぼ100%肝動脈から血流を受けています。

このため、単発の肝がんであれば手術療法が行われますが、多発している肝がんに対しては肝動脈にカテーテルを挿入してそこに抗がん剤を注入するTAE(肝動脈化学療法)や、さらにそこに詰め物を注入するTACE(肝動脈化学塞栓療法)など、カテーテルと化学療法を併用した治療法が行われます。

また、がんが全身に広がっている場合には、全身化学療法が行われます。

肝動脈塞栓療法

費用は、TAIで、抗がん剤費を含めた治療費として135,000円、TACEでは抗がん剤と塞栓物質非を含めた治療費として305,000円となります。これらの処置は1週間前後の入院が必要になるため、治療費を含んだ入院費としては、TAIで355,000円、TACEで530,000円となります。

全身化学療法

全身化学療法では、ソラフェニブを毎日内服します。費用は4週間で524,000円となり、治療効果を判断しながら継続期間を決定します。

乳がん

乳がんの罹患数は年々増加しており、今では12人に1人は乳がんにかかるといわれています。罹患数は女性で第1位、部位別死亡数は女性で第5位となっています。

乳がんの薬物療法は、ホルモン療法、化学療法、分子標的薬治療の3種類に大別されます。

ホルモン療法

ホルモン療法は、タモキシフェン(内服、4週間で8,000円)、リュープロレリン(4週間ごとに注射、1回41,000円)、ゴセリレン(3ヶ月ごとに注射、1回64,000円)、アナストロゾール(内服、4週間で17,100円)などがあります。

化学療法

化学療法では、AC療法(ドキソルビシン+シクロホスファミド)、TC療法(ドセタキセル+シクロホスファミド)などが行われます。

AC療法

AC療法では、3週間を1周期として、1日目にドキソルビシンとシクロホスファミドの注射を行い、これを4サイクル繰り返します。費用は1サイクル(3週間)19,000円です。

TC療法

TC療法でも同様に、3週間を1周期として、1日目にドセタキセルとシクロホスファミドの注射を行い、これを4サイクル繰り返します。費用は1サイクル(3週間)86,000円です。

分子標的薬治療

分子標的薬治療にはトラスツズマブ(3週間ごとに注射、初回172,000円、2回目以降139,000円)、ペルツズマブ(3週間ごとに注射、初回477,000円、2回目以降239,000円)などがあります。

 

今回は化学療法のみの費用をご紹介しました。また、外来での治療を想定していますが、診察料は含まれていません。

入院しながら治療する場合は、さらに入院費や食事代、差額別途代などさまざまな費用が必要になります。

また、化学療法を行うに先立って、診断や治療方針を決めるため検査も必要になってきます。これらの費用は提示した金額に含まれていませんので、その点ご留意ください。

補完代替医療という選択肢を

がん治療における身体症状・精神症状の負担を減らしたり、再発防止やがん予防に。
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