厚生労働省もがんに関係する学会も、がんの治療における抗がん剤の使用を推奨しています。抗がん剤の投与を受けたことでがんが小さくなったりなくなったりして、一命を取り留めた方も存在します。

しかし、日本の医師免許を持つ、がん治療の権威といわれる医師が、抗がん剤を使ったがん治療を明確に否定しています。
その医師の「抗がん剤を使わないほうがよい理由」を紹介します。

そもそも抗がん剤とはどのような薬なのか

抗がん剤を否定する説を紹介する前に、そもそも抗がん剤とはどのような薬なのかについて見てみましょう。

当初3,500万円もしたオプジーボ

最近話題になった抗がん剤といえば、小野薬品工業が2014年に販売した、「オプジーボ」でしょう。皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」や肺がんの治療で保険適用になりました。

オプジーボはその効果も注目されましたが、マスコミの関心事はその価格でした。この薬を1年間使うと、薬代だけで3,500万円になるのです。
患者負担はその3割ですし、高額療養費制度を使うと患者負担はさらに減るのですが、その分、公的医療保険制度が負担しなければなりません。

オプジーボの対象となる患者は5万人いるとされ、全員がこの薬を使ったら薬代だけで1兆7,500万円になり、ただでさえ苦しい公的医療保険財政が、より一層窮地に追い込まれることになります。

この金額は「薬品メーカーが儲けすぎている」という批判を招き、政府などは急遽、オプジーボの価格を半額にしました。公的医療保険が使える薬品ですので、政府に価格決定権があるのです。

「儲け主義」と批判する近藤医師とは

オプジーボのように、新薬を使えば使うほど製薬会社と医師が儲かる仕組みに警鐘を鳴らしている医師がいます。
それが冒頭で紹介した「がん治療の権威でありながら、抗がん剤治療を否定する医師」である近藤誠医師です。

近藤医師は慶応大学医学部を卒業し、慶応大学医学部の講師となり、2014年の定年まで慶応大学医学部に勤務していました。専門は、がんの放射線治療です。
現在は東京・渋谷で「近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来」を開設しています。

その近藤医師は「肺がんにオプジーボは効かない」と断言しています。
オプジーボは、公的医療保険の対象にもまった、いわゆる「きちんとした抗がん剤」です。
近藤医師はそれを否定するのです。

オプジーボだけではありません。近藤医師は、ほとんどすべての抗がん剤を否定しているのです。何を根拠に、そのような大胆な主張を展開しているのでしょうか。

正常細胞にも薬の成分が取り込まれることがある

近藤医師は抗がん剤のことを「強力な細胞毒」「殺細胞薬」と呼びます。要するに、がん細胞も正常細胞も同じ細胞だから、がん細胞にとっての「毒」であり、がん細胞を「殺す薬」である抗がん剤は、正常細胞の毒となり、正常細胞も殺してしまう、という意味です。

抗がん剤は「アルキル化薬」「代謝拮抗薬」「抗がん性抗生物質」「植物アルカロイド」などに分けられます。

いずれも細胞内のDNAを壊したり、細胞内に取り込まれて細胞の働きを阻害したり、細胞分裂を抑制したりします。

例えばそのうちのひとつである代謝拮抗薬の「メトトレキサート」は、細胞内の核酸がつくられるのを阻害する効果があり、急性白血病や乳がん、胃がんの治療で保険適用となっています。
核酸とは、遺伝に関係する重要な物質です。
この薬の成分は、がん細胞だけでなく正常細胞にも取り込まれてしまいます。

ですので、「強力な細胞毒」「殺細胞薬」といった表現は多少刺激が強すぎるきらいがありますが、それでも多くの抗がん剤は「毒」や「殺」という要素が含まれているのです。

なぜ「抗がん剤には延命効果がない」と断言できるのか

抗がん剤が正常細胞「も」壊してしまうことは事実のようですが、しかしがん細胞「も」しっかり壊してくれるのも事実です。

そうであれば、医療に詳しくない一般の人は「多少正常細胞が壊れてしまっても、がん細胞さえきっちりやっつけてくれれば、延命が可能になるのではないか」ですとか「製薬メーカーも、がん細胞をメーンにたたく薬を開発しているのではないか」と感じます。

しかも、大手新聞社や大手テレビ局などいわゆる「信頼のおける情報筋」の多くが、抗がん剤開発の進化を報道し、抗がん剤のお陰で生き延びた人のことを紹介しています。
それでも抗がん剤は効き目がないのでしょうか

この疑問にも近藤医師は答えています。

画像検査機器の進化がバイアス(偏見)を生む?

近藤医師は「リード・タイム・バイアス(先行期間による偏り)」という言葉を使って、抗がん剤には延命効果がないと説明しています。
難しい言葉ですが、意味は簡単です。

一般の人が「この抗がん剤には延命効果がある」と感じるのは、がんの発見からがん死までの期間が長くなったときです。

例えばある患者が医師から、「大腸がんの肝臓転移がこの状態で発見された場合の平均余命はA年です」と宣告されたとします。
そして抗がん剤治療を受けたところ、B年生存できたとします。
このときB年のほうがA年より長ければ、つまりB>Aの場合「この抗がん剤には延命効果があった」と感じます。

ところが、CTなどの画像検査が飛躍的に進化したことで、以前よりも小さな転移がんを見つけることができるようになりました。
つまり延命期間のスタート地点が、かなり先行されるようになったのです。こうなると、がんの発見から死亡までの期間が延びたように見えます。

近藤医師は、本当に抗がん剤によって延命期間が延びたのか、それとも単に延命期間が延びているように見えているだけなのか、証明されていないと言うのです。

リード・タイム・バイアスの解説

それではリード・タイム・バイアス(先行期間による偏り)についてもう少し詳しく見てみます。

AさんとBさんは双子で、同じ健康状態、同じ生活習慣だとします。
AさんとBさんが1月1日に同じ病院を受診して、同じ医師が2人に同じがんを発見したとします。Aさんは抗がん剤の使用を拒否して、6月30日に亡くなりました。
Bさんは抗がん剤を使用して12月31日に死亡したとします。
これは「本当の延命効果」といえます。

<本当の延命効果>

1月1日 6月30日 12月31日
Aさん:抗がん剤未使用 がん発見 がん死
Bさん:抗がん剤使用 がん発見 がん死

ところが近藤医師は、実際のがんの治療現場ではこうはなっていないと言うのです。
AさんとBさんの条件は先ほどのケースと同じで、ただ、がんの発見時期だけが異なります。
<見せかけの延命効果>

1月1日 6月30日 12月31日
Aさん:抗がん剤未使用 がん発見 がん死
Bさん:抗がん剤使用 がん発見 がん死

Aさんは6月30日にがんが見つかり、抗がん剤の使用を拒否し12月31日に亡くなりました。
Bさんは1月1日にがんが見つかり、抗がん剤を使用し、12月31日に亡くなりました。
このとき一般の人は「Aさんは抗がん剤を使わなかったから半年で亡くなったけど、Bさんは抗がん剤を使ったから1年間生きることができた」と感じるでしょう。

しかし近藤医師の見解ですと、Bさんはたまたま早くがんが見つかっただけで、抗がん剤を使用していなくても、12月31日に亡くなっていた、となるのです。

さらに近藤医師は、抗がん剤を使うと命を縮めることになるとも言っています。
どういうことなのでしょうか。

「毒が蓄積される」という考え方

近藤医師は「抗がん剤は毒」と考えています。そして抗がん剤の毒性は、全身にめぐり蓄積されると考えています。

がん細胞は、正常細胞の遺伝子異常によって生じます。つまりがん細胞の元は、正常細胞なのです。それでがん細胞は、異常をきたした遺伝子以外は、正常細胞を酷似しています。

それで近藤医師、がん細胞を減らす効果がある抗がん剤は、同時に正常細胞もたたいてしまっているはずだ、と主張するわけです。
この理屈は正しいと言えます。
抗がん剤の使用を肯定する参考書にも、「代謝拮抗薬メトトレキサートは正常細胞や感受性の高い悪性細胞(がん細胞のこと)に能動的に取り込まれる」と記載されています。

近藤医師の理屈は、簡単な足し算と引き算で説明できます。
抗がん剤ががん細胞を殺す効果をプラスとします。
抗がん剤が正常細胞を殺してしまう効果をマイナスとします。
プラスとマイナスを足して、マイナスが残った場合、「抗がん剤の害悪のほうが多い」または「抗がん剤を受けないほうがまし」となるのです。

近藤医師が肯定的に見るがん治療とは

近藤医師は「がん治療はするな」とは言っていません。抗がん剤を否定しているだけです。
抗がん剤以外のがん治療は肯定的に見ています。

手術について

がん治療の3大療法は、手術、抗がん剤、放射線とされています。
そのうちの手術については、がんの原発病巣とリンパ節を取り除くことで根治が認められる場合は、効果があるとしています。

原発病巣とはがん細胞が最初に発生した場所という意味で、例えば肺がん発症し、その後に肝臓に転移した場合、肺が原発病巣となります。

ラジオ波焼灼療法について

近藤医師は、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法が可能であれば、手術の前に行うべきであると述べています。
ラジオ波とはAMラジオの周波数に近い450キロヘルツの高周波のことです。肝臓がんの中に電極を挿入し、高周波を流してがん細胞を焼いてしまうのです。

放射線治療について

近藤医師は放射線治療についても否定していません。
放射線治療では、放射線がかかった臓器が壊れることがあり、その場合は副作用が生じます。しかし副作用の強さや、副作用が続く期間の長さは、当てる放射線の量によって調整できます。

「抗がん剤も薬の量を調整すれば、副作用をコントロールできるのではないか」と感じると思いますが、そうではないそうです。

放射線治療の場合、がん細胞がある臓器にしか当てないため、副作用が起きたとしても限定的です。
しかし抗がん剤は血液やリンパにのって全身に回るので、がん細胞がある臓器以外の臓器も障害されるため、命を縮める副作用を引き起こしかねないのです。

抗がん剤が効くがんと効かないがん

近藤医師は、抗がん剤で治る可能性があるがんはある、と言っています。それは、急性白血病、悪性リンパ腫、睾丸のがん、子宮絨毛がんなどです。

ところが「固形がん」に分類される肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、腎がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮がん、乳がんは、抗がん剤では治らないと断言しています。

細胞死のしやすさの違いか

抗がん剤によって治るがんと治らないがんがあるのは、がん細胞の細胞死の誘導のしやすさによるものではないか、というのが近藤医師の推測です。

正常細胞は、一定期間が過ぎると死滅するようになっています。この仕組みを「細胞死」または「アポトーシス」または「細胞の自殺」といい、これは正常な証拠です。
一方でがん細胞は、その人が死ぬまで増殖を続け細胞死しないのです。

近藤医師は、急性白血病などは抗がん剤によってがん細胞が細胞死するが、肺がんなどは抗がん剤によって細胞死しない、とみているのです。

分子標的薬も否定

副作用を飛躍的に小さくした抗がん剤として注目されている分子標的薬についても、近藤医師は否定しています。

分子標的薬は、がん細胞に存在し、正常細胞には存在しないタンパクを攻撃する薬です。これなら理論上は、がん細胞だけが死滅し、正常細胞は攻撃されません。

しかし近藤医師の見解では、分子標的薬は急性白血病では目覚ましい成果を上げているものの、肺がんや大腸がんなどの固形がんには延命効果がないとしています。

それは固形がんのがん細胞には2万種のタンパクがあり、分子標的薬がその一部のタンパクをブロックしても、がん細胞は機能し続けると考えられるためです。

まとめ

近藤医師の説には説得力があり、その著書は100万部を超えるベストセラーになっています。また近藤医師は、日本の私立大学病院の最高峰である慶応大学病院に勤務していました。
しかし近藤医師の見解について「(抗がん剤を使った)治療をしなくても結果は変わらないから『死を覚悟せよ』といっているようなものだ」と、批判する医師もいます。その医師も長年がん治療に携わっている方です。


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